昔の旅の思い出。2016年に訪問したモロッコでの印象的なできごと。僕は2016年、モロッコに10日ほど滞在した。ルートはマラケシュ→メルズーガ(サハラ砂漠)→シャウエン→フェズ→マラケシュ。
モロッコは多様な文化が混ざり合っているが、基本的にはイスラム教の国だ。街を歩いていればモスクをたくさん見かけ、イスラム教徒を礼拝に招くアザーンが鳴り響く。女性も髪を覆うヒジャブや口まで覆うニカブを使う人が目立つ。
そんなモロッコでのできごと。
僕が出会った一人のモロッコ人男性。彼はイスラム教徒で、日本人の奥さんを持ち、日本向けの仕事をしているそうだ。僕が日本でどんな生活をしているとか、留学中のイギリスはどうだとか、彼におすすめのレストランを聞いたり、とりとめのない話を結構長いことしていた。正直、彼と話したことはもう覚えていないのだが、唯一、鮮明に言われてたことを覚えている。
「日本はよい国だ。古くからの歴史や文化を大切にしている。日本車を代表するように技術力が高い。日本は料理もおいしい。世界でもっともすぐれた国の一つだ。だが、日本にただ一つ足りないものがある。何だと思う?」
僕は詰まって、ろくな答えをした記憶はない。彼は言った。
「日本人に足りないのは神への信仰だ。日本人は神を信じていない。日本人がイスラム教を信じるようになれば、日本はもっと優れた国になる。」
僕はとても衝撃を受けた。
世界の多くの人にとって宗教は戦争を起こすほど大切ものだと知識としては理解していたが、自分が何かの宗教を強く信仰しようなんて思ってもいなかった。
日本でイスラム教が広まれば、日本がよりよくなるなんて、自分では発想をしたことすらなかったことを当然のことのように言う彼に驚かされた。
僕にとって神なんて人生の軸でも何でもないことに気づかされた。僕にとっての神と彼にとっての神は、言葉は同じでも、全く違うものだ。
僕がはじめて宗教について考えるように向き合わされたできごとだった。
旅の途上、ふと自分の人生観や価値観を揺さぶる経験に巡り合うことがある。こういった経験こそが、旅の醍醐味だ。
新型コロナウィルスから解放されて、自由に旅ができる時が早く来るように、自分の想像もしていない心揺さぶる経験をできる日を心待ちにしている今日この頃。
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