" /> 【JICA海外協力隊記録②】フィジー・卓球隊員から見た現地の課題(強化育成編)

【JICA海外協力隊記録②】フィジー・卓球隊員から見た現地の課題(強化育成編)

JICA海外協力隊

私がJICA海外協力隊・卓球隊員としてフィジーで活動した時の様子をお伝えします。

私が配属されたフィジー卓球協会(以下、卓球協会)では小学校やコミュニティーに訪問指導をする「普及活動」と有望なジュニア選手やナショナルチーム選手への競技レベル向上を目指す「強化育成」に取り組んでいました。

①では「普及活動」の課題、今回の②では「強化育成」の課題、③では課題解決のために実行した・したかった事を書いていきます。

JICA海外協力隊の情報やフィジーの卓球事情については、ぜひこちらの記事をご連絡ください。

【練習環境】裸足なのに練習場には画鋲が…

画像1
ナショナルチームの練習風景

そもそも練習場を確保できない

練習場は他団体と共同のホールを使用していました。週5回の練習が基本でしたが、ホールを確保できないことがありました。また、17時から予約していても18時まで練習をスタートできないこともあります。

ナショナルチームチームも裸足で卓球

フィジーでは裸足で街中を歩いている人をたまに見かけました。都会から少し離れた村では裸足で子どもたちが走り回って遊んでいました。フィジー人にとって靴を履かないのは、文化的に珍しいことではないようです。

しかし、卓球におけるシューズはクッションのように衝撃を吸収して足のケガを防ぐ、スポンジのように移動を支える等、重要な役割を持っています。ナショナルチームでもシューズの役割を理解しておらず、シューズを持ってくるように伝えても、持ってこない選手もいました。

【危険】裸足で卓球するのに画鋲が落ちてる!

他団体の使用後にはホールの床に画鋲が落ちてることもありました。信じられない状況ですが、練習場を確保するかどうかを心配する前に、選手が安全にプレーできる環境ではなかったのです。全力で踏み込む選手が思い切り画びょうを踏んだらと考えると、恐ろしい気持ちになったことを覚えています。

【用具】卓球台もまっすぐじゃない…

5年間以上も同じラバーを使用

卓球ラバーの寿命は一般愛好家が使うとしても3か月~6か月程度です。1年も使用すると、だいぶ性能が落ちることを感じます。しかし、ナショナルチームで海外遠征に参加している選手なのに、5年以上も同じラバーを使っている選手がいました。フィジーには卓球ショップが1つもありません。ラバーを購入するには海外遠征に行った際に購入するか、海外に行く人に頼んで買ってきてもらうか、寄付に頼るしかありません。ラバーの入手自体が難しいのです。

しかし、卓球選手にとって用具は非常に重要です。ちゃんとした用具を使用できれば、もっと良いボールが打てるのに…と感じることは多かったです。

卓球台の天板(表面)がまっすぐじゃない!

過去に寄付された卓球台らしいのですが、卓球台の天板(表面)がまっすぐではないので、その一部は確実にイレギュラーバウンドします。卓球協会に新しい卓球台を購入する余裕もなさそうでしたが、前述のように卓球ショップもないフィジーでは購入するのもハードルが高いです。

競技人口が少ない・次世代が育たない

競技人口が少ない=ナショナルチームの危機感がない

別の記事で書いたように卓球の普及活動でも課題は多く、競技人口が増加している様子はありませんでした。競技人口が少ないと、当然ですが競争は緩やかです。必死に練習をしないでも、ナショナルチームとしての立場が危うくなることもなければ、国際大会にも安定して出場できます。

次世代が育っていない

ナショナルチームでも十分な練習環境とは言えませんが、これから強くなってほしいジュニア選手も同じ場所で練習していました。夕方早い時間がジュニア選手+初心者、夕方遅い時間がナショナルチームでしたが、ジュニア選手と一緒に完全に初心者の子どもも混ざって練習しているような環境でした。初心者同士では互いにラリーを続けることもできず、指導者は初心者のサポートに相当の時間をかける必要がありました。

ジュニアチームの育成環境が良くないこともあり、私がいた時点でもナショナルチームとジュニア選手には大きすぎる実力差があり、ジュニア選手はナショナルチームの練習相手にもなりませんでした。

日本の卓球界では次々に若い選手が出てきますし、小学生から卓球をクラブでやり込んでいる選手も非常に多いです。そんな日本では深く考えたことがありませんでしたが、トップ選手が危機感を持ち成長するには競技人口の増加、激しい競争が必要なのです。

オリンピック出場選手でも卓球を仕事にできない

マネー かなしみ

残念ながら、フィジーでは卓球選手や卓球コーチとして生計を立てられません。オリンピック出場選手でも同様です。フィジーにはプロチーム、実業団リーグもないので選手として稼ぐこともできません。卓球協会のディベロップメントオフィサー(コーチ)でも仕事がなく、給料がない日もある状態です。そのため、ナショナルチーム選手は高校や大学のうちしか本格的に練習できず、卒業と同時に卓球とは関係ない仕事を始めて、半ば引退状態になっていました。

フィジーではラグビーが国技として愛されています。日本を含む海外でもプロラグビー選手として生計を立てている人は多いです。選手を引退してもコーチの仕事もたくさんあるようです。ラグビーのようにスポーツで稼いでいくロールモデルができると、より多くの選手が競技を中心にキャリアを形成できます。

考える・反省する習慣がない、そのための指導もしない

考える・反省する習慣がない

私は中学、高校時代、卓球ノートを作っていました。卓球ノートにはその日の反省、技術のコツ、指導された内容、試合の記録(点数だけではなく戦術など)を書いていました。これにより、練習・試合を振り返り、反省するとともに、自分の課題・目標などを主体的に考えられるようになります。日本の卓球の指導においては一般的です。

フィジーでは卓球ノートを書いている選手など1人もいませんでした。それでも自分で考え、試行錯誤して練習・試合をしているならば良いのですが、その様子は全く感じられませんでした。

ナショナルチーム選手たちは他の選手より競技歴が長く、技術的には優れていました。しかし、ナショナルチームに質問してみると、下記のように考える習慣が全然ないのです。

「なぜこの練習しているの?」⇒「なんとなく」

「この試合でよかったところはどこ?」⇒「攻撃が入った」

「なぜこの打球はミスしたの?」⇒「わからない」

「この試合でよくなかったところはどこ?」⇒「わからない」

考える・反省する指導していない

当然ですが選手は1人で試合に挑みます。1人で考え、戦わなければなりません。そのために、試合中も自分で考えて、戦術を変更していかないといけません。そのため、練習の時から自分で考え、改善できる能力が必要です。

その思考力の重要性を選手に伝えるのは指導者の役目です。しかし、フィジーでの指導では、具体的にどのように反省するか、思考するか、指導している様子はありませんでした。

まとめ

いかがだったでしょうか。

フィジーの卓球現場を少しでもイメージいただけたでしょうか。

次の記事では僕が2か月で現地の課題にどう向き合ったのかをまとめます!

次回③では課題解決のために実行した・したかった事を書いていきます。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

今日も皆さんにとってよい1日でありますように。

コメント

タイトルとURLをコピーしました