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【青年海外協力隊】想像できますか?フィジーの車いす卓球選手

JICA海外協力隊

先進国と呼ばれる日本ですら、ハード面のバリアフリーは十分ではないと僕は障害を持つ方と関わる中で感じてきました。それでは、インフラ整備が日本より劣る発展途上国、中進国の障害を持つ方はどのように暮らしているのでしょうか。皆さん、想像できますか?

今回はフィジーのパラ卓球選手をご紹介します。

パラ卓球 フィジー代表 Kope(コぺ)

まず、Kopeのドキュメンタリー動画をご覧ください。

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Kopeが生活する村

Kopeは車いす卓球フィジー代表として国際大会にも出場する選手です。

映像だけで彼の生活の様子がイメージできます。特に、コンクリートで舗装されていない急斜面を上るシーンは、日本に住む人からは想像できないでしょう。

【動画の説明】7 years ago Kope Taberanibou acquired his disability while protecting his family from Cyclone Tomas. Life as he knew it was over. Kope was depressed and scared of becoming a burden to his family, until he found table tennis and the Smash Down Barriers program. Today, Kope is an inspiration to his friends and family, and now he’s challenging you to achieve your dreams. As Kope says “believe in yourself, if I can do it you can do it!”

 【動画の要約】彼の名前はKope Taberanibou。2010年のサイクロンの際に障害を負いました。障害を負った直後、彼にとって家族の重荷となることはつらい物でした。彼は卓球に出合います。彼は国際大会にも出場するまで成長し、Development Officer(普及活動を行うコーチ)として働いています。

選手としてだけではなく、コーチとしても優れているKope

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僕とKopeはフィジーの首都スバ近辺に住んでおり、一緒に練習していました。

Kopeは向上心がとても高いです。僕が教えなくても、自発的によいと感じた僕の技術を真似して練習していました。車いす卓球歴もわずか約5年。まだまだ選手として強くなれます。

上から目線になってしまいますが、Kopeはコーチとしても優秀でした。子どもを笑顔にさせながらウォームアップを一緒にします。卓球の基本も丁寧に言語化しながら説明できます。Kopeと同じくらい子どもを楽しませながら技術指導もできるコーチは日本でも数少ないと感じました。

Kopeは卓球選手、コーチとして高い能力を持っています。しかし、彼が卓球選手、コーチとして活動するのにさまざまな課題があります。

課題① 移動手段とお金のせいで活動が限られる

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Kopeのやる気がどれほど高くても、活動をする機会は限られます。移動手段とお金が問題です。

移動手段
・電車:フィジーには存在しない
・バス:車いすでは使えない
・自家用車:高価で購入できない
→タクシー:練習場と自宅の往復で1500円(バスなら100円以下で乗れる)
→金銭的な余裕がないため、週3回しか練習に来れない
→コーチとしての活動も制限される

動画でKopeは「Development OfficerとしてSpecial school(≒特別支援学校)に訪問指導をしてから練習場に向かう」と語っていました。

ところが、現在、Kopeは学校での指導をほとんどできません。Development Officerとして学校に行く交通費はフィジー卓球協会が負担します。しかし、Kopeのタクシーでの移動は通常よりも交通費が高くなるので、フィジー卓球協会はKopeをなかなか派遣できません。

課題② 週3回の貴重な練習、でも集中して取り組めない

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Kopeは選手として高いモチベーションを持っており、高い交通費を払って週3回の練習に行きます。

Kopeにとって貴重な練習。本来であれば、僕も全力で彼との練習に臨みたい。ところが、Kopeにとって十分な練習環境ではありませんでした。

練習時間
17:00-18:30 ジュニア選手、パラ選手
18:00-20:00 ナショナルチーム

僕はナショナルチームの指導を担当していました。ナショナルチームの練習は18時からですが、17時に1人でもナショナルチーム選手が来たら練習をスタートしていました。

17時から18時30分のジュニア選手、Kopeを含むパラ選手の指導は別のコーチが担当していました。

しかし、そのコーチはひんぱんに遅刻、時には無断で休みます。

僕はナショナルチームの指導中、ジュニアの初心者とKopeしかいなければ、Kopeに初心者の指導を頼むしかありません。

Kopeはきっと自分も練習したいだろうに、初心者の子どもたちを2時間ほど指導して帰ることになります。それなのに、文句も言わず、熱心に指導してくれていました。

「コーチ、気にするなよ。おれは幸せだ!」

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「Kopeはやる気があり、まだまだ強くなれる可能性がある選手。
それなのに練習すら満足をさせてあげれない…。」

僕はKopeへの申し訳なさと抱えながら過ごしていました。

たまたま彼とゆっくり話す時間ができたので、僕の気持ちを伝えました。

「僕はKopeに何ができるだろうか。練習への不満や意見があれば言ってほしい。できる限り環境を変えていきたい!」

そんな僕に、Kopeは言ってくれました。

「コーチ、気にするなよ。コーチが忙しいのはわかっている。わがままは言わない。コーチが時間があるときに一緒に練習してくれよ。練習できるときに練習するんだ。おれはジュニアへの指導も好きだしね。毎日、おれは幸せだよ!」

「コーチは幸せか?仕事、仕事、これやらなきゃ、あれやらなきゃってなってないか。働きすぎないで、幸せでいることが大切さ!」

彼の言葉を聞いて、僕は泣きそうでした。

「どうして、これほど優しい言葉が言えるのだろう。」

Kopeは卓球が好きで、試合で勝ちたい。彼の気持ちは練習を見ていればわかります。そんな気持ちを少しも出すことなく、逆に僕を気遣ってくれました。彼には感謝の気持ちでいっぱいです。

「恵まれた環境ではなくても、自分なりの幸せを大切にしている人」

それが、 僕が出会ったフィジーのパラ卓球選手 Kope(コぺ)でした。

まとめ

発展途上国で長期的に障がい者と関わる方々の知識を100とすれば、僕の知識なんて1程度です。

それでも、日本で暮らす多くの方は発展途上国で暮らすパラ選手の生活なんて想像したことがないはずです。知識がゼロなのと、知識がイチなのは大きな違いです。

みなさんが知らない世界に興味を持つきっかけになったら嬉しいです。

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