インドは、2025年6月現在、ITTFの世界チームランキングで男子は12位、女子は11位と世界上位の実力を誇っているだけではなく、2024年世界卓球(団体)では中国から2点取るなど、世界トップ選手を破る躍進も見せています。
本記事では、インド卓球界の躍進の背景の1つでもある、インド初のプロ卓球リーグ「Ultimate Table Tennis(UTT)」をご紹介します!
プロローグ:UTTが誕生した背景

インドの卓球界に革新をもたらした「Ultimate Table Tennis(UTT)」は、2017年にスタートしたインド初のプロ卓球リーグです。元代表のニラジ・バジャジ氏と女性実業家ヴィタ・ダニ氏が創設し、インド卓球連盟(TTFI)の後援、11Sports社の運営により実現。UTTの設立目的は明確――「インドに卓球の五輪メダルをもたらすこと」。この夢を掲げ、国内外のスター選手が集う舞台が誕生しました。
試合形式とリーグ運営の革新性
男女混合の団体戦で、1つの対戦(タイ)は9試合(シングルス8、混合ダブルス1)で構成されます。試合は3ゲーム制で、各ゲームは11点先取。2-0になっても3ゲーム目まで必ず実施されます。
各タイの勝敗は「獲得ゲーム数の合計」で決まるため、1試合ごとのゲーム取得が非常に重要で、高い緊張感が保たれます。また、「ゴールデンポイント」制度(10-10で次の1点が勝利)で、試合進行をテンポ良く保ちます。観客、テレビ放映のためのエンタメ性も強化しています。
外国人選手対インド人選手になるように対戦が組まれるだけではなく、混合ダブルスでは外国人選手とインド人選手がペアになるなどの工夫もあり、インド選手の活躍と成長の機会にも繋げています。
2025年シーズンから選手オークション制度が導入され、各チームが与えられた仮想通貨トークン(予算)で入札し合う独自のドラフトが行われましたthestatesman.com。
チームとスター選手の豪華な顔ぶれ

UTTには8チームがフランチャイズ制で参加。インド人選手と外国人選手が混成チームを構成し、ジェンダー平等に配慮された構成(男女各2名+外国人男女各1名)で戦います。インド代表のアチャンタ・シャラト・カマルやサティアン・グナナセカラン、マニカ・バトラらが主力として活躍。
海外からはナイジェリアのアルナ・クアドリ、アメリカのリリー・チャン、ルーマニアのベルナデッタ・スッチなどが参戦。特に中国のファン・スーチーは2025年シーズンの最高額契約を記録し話題に。こうした国際色豊かな顔ぶれが、UTTの魅力を高めています。
UTT過去の優勝チームと歴史
Ultimate Table Tennis(UTT)は2017年にインドで始まったプロ卓球リーグで、毎年インド国内外のトップ選手が参加しています。以下に、各シーズンの優勝チームと準優勝チームをまとめます。
シーズン | 年 | 優勝チーム | 準優勝チーム |
---|---|---|---|
シーズン1 | 2017 | Falcons TTC | Shazé Challengers |
シーズン2 | 2018 | Dabang Delhi TTC | Falcons TTC |
シーズン3 | 2019 | Chennai Lions | Dabang Delhi TTC |
シーズン4 | 2023 | Goa Challengers | Chennai Lions |
シーズン5 | 2024 | Goa Challengers | Dabang Delhi TTC |
シーズン6 | 2025 | U Mumba TT | Jaipur Patriots |
2023年と2024年はGoa Challengersが連覇し、2025年にはU Mumba TTが初優勝を果たしました。
インド卓球界へのインパクト
世界レベルの経験が若手を育てる
UTTは、わずか数年でインド卓球界に劇的な変化をもたらしました。特に選手育成面では、世界のトップ選手と高い緊張感の中で競い合う環境が整い、若手選手の台頭やエースの国際舞台での躍進に直結しています。
UTT共同創設者のヴィタ・ダニ氏は、次のように語っています。
「世界レベルの強豪との実戦経験は何物にも代えがたいです。トップ選手を打ち破った経験が自信となり、それがインド全体の卓球水準を引き上げます。」
(出典:sportsmintmedia.com)
その言葉通り、パリ五輪2024ではインドが史上初めて男女団体での出場権を獲得し、UTTの果たした役割が大きく評価されています。
近年のインドの躍進は下記にまとめています。
女子卓球の飛躍と対等な舞台
UTTは男女平等な構成を採用しており、男女がそれぞれ同数のシングルス試合に出場するシステムによって、女子選手にとっても等しく勝敗を左右する舞台が整えられています。
2017年の初年度には、マドゥリカ・パトカルが外国人トップ選手から歴史的勝利を挙げ、注目を集めました。その後もマニカ・バトラがMVP級の活躍を見せ、さらにスリージャ・アクラやディヤ・チタレといった次世代のスター選手が国際大会で成果を挙げるなど、UTTが女子卓球の飛躍を後押しする存在であることは明白です。 (出典:ultimatetabletennis.in)
インドの性差別問題について
インドは、男性優位な社会が根強いです。2023年6月「ジェンダー・ギャップ指数」によると、インドは146カ国のうち127位と低い順位に位置しており、男女平等には大きな課題があります。その中で、卓球を通じたジェンダー平等には特に価値があるのではないでしょうか。
性差別問題について参考資料


卓球人気の拡大と商業的成功
UTTのリーグ戦は毎年、インド各地の主要都市で開催されており、地元チームの試合日にはスタジアムが熱気に包まれるほどの盛り上がりを見せています。
テレビ放送や配信サービスを通じて卓球への注目が高まり、YouTubeやSNSでのハイライト映像もファン層拡大に貢献しています。2024年には、初めてすべてのスポンサー枠が完売し、商業的にも大きな成功を収めました。
「卓球競技全体に資金と関心が流れ込んでいることが何より喜ばしい」
(ヴィタ・ダニ氏のコメントより、出典:sportsmintmedia.com)
プロモーションビデオも日本の卓球界の演出では見たことのないような、ユニークでインドらしい面白さがあります。ぜひご連絡ください。
国際大会誘致と卓球大国への道
UTTの成功は、インドが国際卓球大会の開催国として存在感を高める原動力にもなっています。2023年にはゴアでWTTスターコンテンダー大会を国内で初開催し、2024年、2025年にチェンナイでWTTスターコンテンダー大会を開催しました(UTT公式)。
これらの大会誘致を通じて、インド卓球界の国際的地位が大きく前進しており、その中心にUTTの存在があります。 (出典:ultimatetabletennis.in)
総括:UTTが変えたインドの卓球風景
UTTは単なるプロリーグを超えた存在です。競技力向上、女子選手の地位向上、国際大会招致、スポンサーシップ強化――そのすべてが、インド卓球界の「今」を築いています。
これからもUTTは、「五輪メダルの夢」を掲げつつ、世界の卓球界に新たなスタンダードを打ち立てていくことでしょう。
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